2005年8月29日〜9月5日 事務局 依知川 守 【見える危険 見えない危険】 私はJFSAの事務局になり8年になります。これまで友人などに「パキスタンのカラチ市の学校を支援している」と言うと「大丈夫?危ないところでしょう?」という言葉が返ってくることが何度となくありました。私自身この仕事に関るまでは、テレビや新聞で時折目にする「パキスタン」「過激派」「テロ」という言葉の点が、いつしか自分の中で線として「パキスタン=危険」というイメージを形作っていたと思います. しかし、このイメージは実際にパキスタンを訪れたことで変化しました。その漠然とした「危険」はそれ自体に実体があるのではなく、その背景に目を向ける必要があるのだということに改めて気づかされたのです。つまり「貧困」と同様、「危険」という言葉についてもその表現を使うことで、その中に全てを閉じ込め、対岸の出来事として片付けることはできない、ということです。
事故の起きた水路
【貧困と危険の中で生きる人々と連帯する】 アルカイール・アカデミーに通う子どもたちやその家族など、貧困の中で生活している人々は、前述のような事故以外にも、食糧不足、暴力、強盗、テロなど命を落とす要素と向かい合い生活しています。人々は幾重にも重なる危険の中で日々を送っているのです。現地の人々と接するとその表情が精悍に見えることがあるのですが、それは生まれながらの表情ではなく、厳しい現実をくぐり抜けてきたことを映し出す鏡に思えます。 現在アルカイール・アカデミーには診療所がありますので、生徒や家族は無料で診療を受けられますが、そのような施設がなければ経済的な理由で治療を受けることさえできず、病状を悪化させ死に至ることもあるでしょう。場合によっては借金することになり、さらに生活が厳しくなることも考えられます。社会全体としても日本のように危険を未然に防ぐシステムが乏しい上、貧困の中に暮らす人々は、あらゆる危険から最も守られない存在だといえます。家族、友人、近所という人間関係についても決して友好的なだけではなく、憎しみによって殺人さえ起こる可能性も孕んでいます。 だからこそアルカイール・アカデミーのような存在が、人々に支えあいの機会を生み、地域に開かれた場として広がるための協力をしたいと思います。