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| 会報１２号より |
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「狂犬病への不安と恐れに抗（あらが）って」海外事業担当 西村光夫 |
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フィリピンから日本に帰国した男性が狂犬病を発病して死亡したというニュースが、今年の11月末に伝えられました。その数日後に、私と田邉理事長はアルカイールアカデミーと来年度計画の確認と輸出入事業推進のためパキスタンに向かいました。ニュースでは、パキスタンでも毎年狂犬病による死者が出ているという事でした。カラチ市内の至る所にいる野犬の事が気に掛かりました。テレビニュースでは、フィリピンの病院で手足をベッドに縛られ暴れ苦しんでいる患者さんが映し出されていました。狂犬病は犬のウィルス性伝染病で、病犬に咬まれると神経系統を冒され、昏睡状態に陥り、発病すれば４〜５日で殆んど死亡するという恐ろしい病気です。日本では狂犬病予防法で犬の登録観察時に予防接種をすることになっており、狂犬病はありませんでした。 パキスタンでは犬の生態が日本と大分違っています。犬をペットとして飼っているのは一部のお金持ちの人で、殆どの家では犬を飼ってはいません（宗教上の理由があると聞いていますが・・・）。しかし、街には沢山野犬が住み着いています。野犬の成犬は小学生よりも大きく勇猛で、昼間は道端で寝転んでおり、夜間に生ゴミをあさっています。日本では登録･観察のない野犬は法によって捕獲され始末されてきましたが、パキスタンでは野犬狩は行なわれていないようです。大型犬でもあるということで、人々は、むやみやたらに手出しはしておらず、のんびり昼寝をしている犬を見ると、当たらず触らずの奇妙な共生をしているように見えます。 しかし、学校の先生の話によると、犬に咬まれる子どもも居ると言うことでした。以前、物乞いをする子どもにインタビューをした時に怖い物のひとつとして犬を挙げていましたが、子どもにとってはとても危険な存在なのです。貧しさの中で暮らす子どもは、貧しい事により死に至る危険にさらされます。予防接種を受ける事も出来ず、もし、犬に咬まれても病院にも行けず死に到ることになります。社会的な環境の劣悪さに加えて貧しさにより、助かる命も助からないという現実の中にいるのです。 パキスタンに限らず開発途上国といわれる国には、日本には存在しない危険な病気があります。しかし、狂犬病のニュースのように病気の存在のみをスキャンダラスに伝えるメディアの情報は、安全な領域に住む日本の人々に不安や恐れを強く印象づけます。私は、その不安や恐れが、現地の人々の抱える問題に寄り添うことを避けていく事に繋がっていくのではと危惧しています。安全な領域は、世界がグローバル化している今、決して聖域ではありません。劣悪な環境の下に暮らす人々に想いを到らせること無しには、自分たちの安全を確保できないのです。私たちひとりひとりが、やれることをやれる範囲で行い、その行動の「連なり」が劣悪な環境を変えていく力になるのだと思います。 JFSAの活動は、この「連なり」を会員･支援メンバー、古着などを送って下さる人（約一万人）、そしてスラムに暮らす人々と伴につくりだしています。JFSAが運営を支援しているアルカイールアカデミーでは、スラムに住む子どもたちの学ぶ権利を守ると共に、命を守る為に学校内に小さな診療所を設けています。もし、病犬に子どもやその家族が咬まれても無料で診療所の医者に掛かる事が出来ます。大きな病院と連携する関係もあり、緊急にワクチンの接種も出来ますので死に到る事を避けられます。劣悪な社会環境を変えていくまでの道程（みちのり）は遠く感じますが、未来そのものである命ながらえる子どもたちと「連なり」をもって歩んで生きたいものだと思います。 |
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