事務局 西村光夫
○第1回目交渉 (2008年10月24日) JFSAから送られてきたパッキングリスト(古着等の種類ごとの重さが記されている)を卸業者ワリー氏とニアーズ氏に渡して交渉を始めました。交渉はいつもムザヒル校長宅で午後9時ごろから始めて夕食を挟んで夜中の12時ごろまで行ないます。卸価格の決め方は、種類ごとに異なる価格にそれぞれの数量をかけて、その合計を総量で割り、キログラム当たりの価格を算出します。(バッグと冬物子供服は卸売り品目から除きます。卒業生の販売チームがバザールで販売しますので)種類ごとの価格は季節やマーケットの相場の動きによって変わります。例えばセーターは寒い季節を迎える時期だと高くなりますが、暑い季節になると安くなります。暑い季節が長い地域では冬物の価格は一般的に安くなります。季節に関わりなく高い価格で売れる物もあります。(毛布やシーツ、女性下着、ハンカチなど)これらのことを計算に入れて、AKBGと卸業者は双方の希望価格を提示して交渉を行ないます。買い手である卸業者は安い価格を、売り手であるAKBGは高い価格を提示します。 今回は、卸業者はキログラム当たり38ルピーを提示しました。前回は36ルピーから始まり45ルピーで決着しましたので、今回は前回を上回る価格が見込まれました。AKBGは前回のものよりも価格の高いものが多く含まれていることと、円に対するルピーのレートが大きく下がって(2008年8月1ルピー=1.56円が10月には1.30円に)いるので、より高い価格60ルピーを提示しました。卸業者はこんなに高い価格をAKBGが提示するとは予想していなかったので驚いた様子でした。2時間ほどの交渉で卸業者の価格を43ルピーまで上げる事が出来ました。しかし、それ以上の価格を引き出すことが出来ずに第1回目の交渉は終わりました。(いつも3回ほどの交渉で決着しています) ○第2回目交渉 (10月26日) AKBGと卸業者は双方の希望価格の根拠を主張して交渉を再開しました。卸業者の今回の言い分は、パキスタンの古着市場が主食や燃料費の高騰で衣類の需要が減っているので小売価格が下がってしまっている、だから、卸売価格を下げて欲しいと言うものでした。そして前回よりも物が良く総量も多いので48ルピーを提示するが、これ以上では買う事ができないと言いました。AKBGは、輸入の為の海上運賃が船の燃料費の高騰で高くなっていること、円に対してルピーの価値が下がっていて仕入れ価格が高くなっている、だから、高く買って欲しいと主張しました。交渉は白熱して時には声を荒げたり、世間話にそれたりしながら次第に価格を歩み寄せていきます。AKBGも折り合いをつけるために、55ルピーまで歩み寄りましたがこの日も決着が付きませんでした。 ○第3回目交渉 (10月27日) 卸業者、AKBGの双方とも相手を納得させる有効な主張が出来ず、価格のことにはなるべく触れずに世間話に花を咲かせていました。何故なら、先にどのくらい歩み寄った価格を口にするかによっては不利な立場に立たされる事があるからです。JFSAの事務局員は、交渉には直接的に口を出さず、AKBGの自己決定を損なわずにアドバイスするという立場で交渉に立ち会っています。その立場から、AKBGがここで先に価格を提示しないことを願っていましたが、ややせっかちな性格のA理事が唐突に「53ルピーではどうか」言ってしまいました。卸業者は、じっくりと1ルピーずつ上げてゆき、51ルピーまで上げるとこれ以上では損を出すことになると言いました。そして「他の業者を捜して欲しい」とまで言ったのです。この卸業者のように現金で買ってくれる業者を見つけるのは容易ではありません。完全に卸業者の思惑にハマリ、51ルピーで決着してしまいました。 前回は45ルピーで決着しましたが、ルピーのレートが1ルピー=1.56円でしたので円に換算すると70.4円でした。今回は1ルピー=1.30円なので前回よりも高い51ルピーであっても円換算66.3円で、4.1円も安く売ったことになります。AKBGの交渉の進め方は以前に比べると比較にならないほど上手くなっていますが、個人としての発言を避けてグループとしての総意をはかって発言する必要があることをAKBGのメンバーと話し合いました。
JFSA倉庫で9月30日に古着等を積み込んだコンテナが、パキスタンの卸業者の二アーズ氏倉庫の近くの路上に、10月29日(水)の午後3時過ぎに到着しました。アルカイールアカデミーのムザヒル校長とその息子サード君、卒業生3名、AKBG事務局カユーム氏が、卸業者が雇った荷役労働者2名とコンテナ荷降し作業を行ないました。写真右はムザヒル校長と卒業生達です。