福島訪問 東葛センター担当事務局 大小原啓太
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招日期間中(2013年5月28日〜6月12日)の5月30日〜31日に、福島市内にある民間保育所「こどものいえ そらまめ(以下、そらまめ)」と福島県新地町内にある小川仮設住宅を訪問しました。 今回の福島県訪問の背景には、以前毎日新聞に掲載された『カチラクンディ分校』の記事をきっかけに贈呈された救援金を、アル・カイールアカデミーから「東日本大震災で被災した子ども達のために使ってもらえないだろうか」という提案をうけました。そこで生活クラブ虹の街の協力を得て訪問が実現しました。 ●「こどものいえ そらまめ」保育園 「そらまめ」は福島県福島市にある認可外の民間保育園です。「そらまめ」では口にするものは無添加のものにし、心身ともに健康な体の土台を作ることを心がけています。 代表の門間さんから保育園の現状を伺いました。「震災前は23人の子ども達がいました。しかし、福島原発の事故の影響で、現在通っている子どもは2人です。庭や建物が放射線汚染の被害に遭ってしまったからです。いち早く除染活動を行ないましたが、雨や台風の度に線量の値は高くなりました。そのため、それまで保育園のあった渡利地区から比較的放射線値の低い現在の場所に移転しました。 しかし、教育に関心のある親の子ども達は線量の影響を受けにくいビルの中にある保育園へ転園してしまいました。」 門間さんの話の中で印象に残った言葉があります。教育や環境問題に関心のある親ほど、放射能汚染への心配からすぐに保育園を離れてしまいました。さらに食べ物に関しても統一された基準がないため家庭内でも意見が分かれてしまう。周囲との摩擦や軋轢がうまれてしまい、結果として次第に繋がりや人間関係が薄くなってしまう。そんな状況の中で門間さんの気持がにじみ出ていたのは『原発の事故によって最後に残るものは「人」「精神性」「意志」』という言葉です。 活動に携わる「人」の気持ちと「目的(意志)」を持った人が共に進んでいく繋がりは、JFSAの根っこにもあります。それは、JFSAとアル・カ イールアカデミーそれぞれが自立をめざし、事業を通して連帯していく事を目的と していることです。 原発の事故後、そらまめは東京電力からの補償金で運営を行なっています。「現在のように(補償金に頼らなければならなく)なってしまったけれど、どんな環境下でも教育のレベルは下げたくない。支えに頼っていられない。自分も自立するという方向性がないといけない」と語る門間さんに、ムザヒル校長先生も「私も教育に対する思いは同じです。頑張るためにこのお金を使って欲しい」と言葉を交わしていました。アル・カイールアカデミーとそらまめは、活動の内容や立場は違うけれど、教育に対する信念や自立した活動を目指す姿勢は共通していると感じました。門間さんの話を聞いて、支援という言葉についても考えました。門間さんが補償金での暮らしに違和感をもっているように、支援を受ける相手≠ノも様々な思いが存在しています。それは嬉しいという感情かもしれませんし、嫌悪感や『しかたない』という感情かもしれません。私がJFSAの活動を説明する際に使っている「支援」という言葉は、JFSAとアル・カイールアカデミーやそこに通っている子ども達、AKBGとの関わり合いを表現できているのかな。問題や課題に対して「お互いの思いをぶつけ合う」「一緒に付き合う、そして考える」そんな言葉がいいと感じまし た。 |
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第42回コンテナ送り出し 国内事業担当事務局 入江賢治
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第42回送り出しには、前日の夜に来日した、ムザヒ ル校長、カユームさん、ワリーさんも参加しました。 当 日は、時折雨がサーッと降ってくる天候となりました が、テントとブルーシートを駆使し、雨対策をして送り 出し作業を無事に行なうことができました。今回も50 名程の方に作業に協力していただきました。協力団体の 方や学生さん、生協の組合員さん、ショップのお客さん などです。選別協力団体からは、あみあみ、オリーブハ ウス、千葉ダルク、ワーカーズ・コープちばが参加しま した。 日頃、選別作業を担っているみなさんに、作業の 集大成である送り出しに参加していただけるのは大変嬉 しいです。 当日は蒸し暑い日となりました。特にコンテナの中は 猛烈な暑さで、かなりしんどい作業となりましたが、交 代で何人もの方が中に入っていただき、本当に助かりま した。このコンテナを買取ることになるワリーさんは開 始から終わりまで、コンテナの中の最前線で奮闘してく れました。 ダルクのみなさんとワリーさんは「男気」 「義理人情」というようなセンスで通じ合うところがあ るのか、すぐに打ち解け、時に冗談を言いながら、体を 張ってベール(古着を圧縮・梱包したもの)を積んでく れました。作業後は、ともに汗を流し、作業をした仲間 として固い握手を交わしていました。 前回、第41回送り出しは2月13日に行ないまし た。今回の送り出しに向けては、約3か月半を掛けて古 着の仕分け、選別、圧縮梱包の作業を選別協力団体のみ なさんと行なってきました。 今回のコンテナには、20 13年1月中旬〜5月中旬頃までに出していただいた古 着の中で、選別が済み、パキスタン送り出し用となった ものが主に積み込まれました。この会報がみなさまのお 手元に届く頃には、AKBGからワリーさんに販売され た古着が小売業者に販売され、パキスタンのどなたかの 手元に渡っているかもしれません。 次回、第43回送り出しは2013年9月25日 (水)を予定しています。 今年度(12年10月〜13 年9月)は計4回の送り出しを計画しています。 これま で4回の送り出しを実行できた年度はありませんでした が、今年度は実行できる見通しです!みなさまのご参加 お待ちしています!! | ||||||||||||||||||||||||||||||||
第42回コンテナ到着報告 海外事業担当事務局 西村光夫
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第42回コンテナ現地到着を報告させて頂く前にスラムに暮らす子ども達の学校、アル・カイールアカデミーの運営自立のために、96年より始めた古着の送り出しは、17年目を迎えました。 今回の送り出しで、総量828トンとなり、10人の生徒達から始められたアル・カイールアカデミーは分校・専門学校など5校約3000人の子ども達が学ぶ場となりました。ひとえに、古着を送って下さった皆様方のご協力によるものだと思います。ありがとうございます。 5月29日JFSAで積み込んだコンテナは、6月5 日横浜港を出港、7月5日にパキスタンのカラチ 港に到着。7月9日に予定していた荷下ろし作業は 関税率引き上げに抗議して行なわれたストライキに より、7月18日に行なわれました。 卸売価格交渉 1sあたり100ルピー以上の卸売価格を 7 月5日に行なわれた卸売価格交渉は厳しい交渉 となりました。【卸売業者のワリー氏とムザヒル校 長、アル・カイールアカデミービジネスグループ理 事のイザハル氏、事務局のカユーン氏が参加。 AK BG側のアドバイザーとしてJFSA海外事業担当 の西村。JFSA事務局の依知川、大小原が立ち会 い。】今回の総重量は前回よりも1.2 トンも少なく、 比較的価格の高い女性下着・子どもの夏服なども少 なかった為、ワリー氏は1sあたりの価格を前回の 96ルピー(1円=1.04ルピー。92.3円)よりも低い価格を主張。一方AKBGは1sあたり102ルピーを要求(関税率引上げで輸入経費が増え、100ルピー以下では前回の純利益を下回ると判断)。激しいやり取りの後、ワリー氏は沈黙 という作戦に変え、AKBGはJFSAにアドバイスを求めてきました。 JFSAはワリー氏に伝えました。「一昨年の年 間のコンテナは3本でした。昨年はグリーンコープ さんも送り出しに参加して5本に。今年度は7本を 計画しています。総量が増えた分、利益も上げてい るのでは?だから価格も上げて欲しい。何よりも学 校への利益が増えることで、教育の機会を受けられ る子ども達を増やすことが出来ます。このことが古 着を提供して下さっている皆さんの願いです。この 願いが無ければ古着送り出し量は減少するでしょ う。」この話だけで価格はすんなりとは上がりませ んでした。そのためJFSAは、スラムの子ども達 の未来が開かれ、ワリー氏にも事業的利益をもたら すよう回収量を増やす努力をすると伝えました。 交渉の結果103ルピー( 99 円)で妥結。関税率 の引き上げで経費が増え、学校への純利益は110 万円(前回より20 万円減)となりましたが、学校の 子ども達のために使われる純利益が110万円に 至ったことは、評価しても良いと考えます。 輸出入の関税率引き上げの理由とは AKBGが利用している通関業者の話によると、 今回の関税率の引き上げは突然の出来事だったそう です。輸出入業者の組合はこれに反撥して、カラチ 港に到着したコンテナを受け取らないという手段に 出ました。結果、港にはコンテナがあふれ、機能が マヒしました。 それは、長期化すれば輸出業者にも 不利益になるため、ストライキを短期間で解除。関 税率を少しでも引き下げるという交渉に変え、結 果、残念ながら僅かな引き下げに終わりました。 関税率の大幅な引き上げは、パキスタン政府に とってやむを得ない事情がありました。輸入に必要 な外貨(ドル・ユーロ・円など)がたった6週間分 という事態に陥っていました。政府は国際通貨基金 (IMF)から一時的な外貨の貸し出しを受けるこ とになりました。しかし、財政を立て直すため、国 内政策に対してIMFの強い干渉を受けることに なったのです。 具体的には、国税徴収の徹底、税率 の引き上げです。このことは、消費税増税ととも に、教育・福祉予算の削減にもつながり、民衆の暮 らしはより厳しくなります。何よりもパキスタン政 府の自立した政策が行なえなくなってしまいます。 こういった事情が今回の輸入関税の税率の引き上げ となったと、ムザヒル校長の兄で元国立銀行員のサジド氏から聞きました。 |
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ムザヒル校長からのメッセージ | ||||||||||||||||||||||||||||||||
●日本を訪問して・・・ 日本訪問では毎回、私は様々な日本の方とパキスタンの問題だけでなく日本の問題についても議論を行なっています。今回の訪問も私自身、多くのことを学ぶことができとても重要なものになりました。 今回に限らず、私が日本で得てきた経験はいずれも、日本とパキスタン両国の人々のために共有したいと思っています。JFSAの事務局と同じように、JFSAの会員や古着を寄付して下さっている全ての皆さんは、とても高い志を持っていると私は考えています。 私は、今回の訪日で福島を訪れ、津波によって破壊されてしまった道路や線路などのインフラ、ビル、学校や家々を目の当たりにしてきました。そして、国を作るこということについて考えました。彼らが失ってしまったビルを最短時間で再建できている理由は、国(ふるさと)をつくるという精神がそこに暮らす人々の中にあったことによるものだと思っています。それは、私と私の国パキスタンにとってとても良い教訓でした。日本で暮らす人々は、決して失敗をせず、成功の秘訣を持っていることをこのことは意味していると私は考えています。 今回の日本でのあらゆる訪問は、私がより熱心に仕事をするための新たな勇気を与えてくれました。そして、この経験と学びは、双方にとってとても実りの多いものでした。私は日本とパキスタン、両方 の社会で厳しい暮らしをしている人々のために、この学びと経験を共有し続けていきます。 本当にありがとうございました。 ムハマッド・ムザヒル |
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会報32号より *写真をクリックすると大きく表示されます |