新型コロナウイルスの感染が世界中で広がる中、JFSAへも「パキスタンの人たちは大丈夫ですか?」というご心配の電話を多くいただいています。5月20日現在、パキスタン政府は4万3千966名の感染が確定し、これまでの死亡者数は939名、そして1万2千489名が回復をしていると発表しています。中でも大きな都市を有するシンド州(カラチ市を含む)と、パンジャーブ州では、それぞれ感染者数が1万3千名以上を超えています。

【写真 分校の周辺に住んで言うr家族に暮らしの様子を尋ねるアル・カイールアカデミー教師のナヴィードさん(左)】 

新型コロナウイルスによるアル・カイールアカデミーの生徒や家族、スラムの人々の暮らしや学校への影響をより詳しく知るため、5月10日にムザヒル校長とカユーム氏に電話でインタビューを行ないました。日本もパキスタンも困難な状況ではありますが、彼らと言葉を交わす中でJFSAとアル・カイールアカデミーの活動の目的に立ち返り、お互い活動への連帯を再確認することができました。

 

【質問】まずアル・カイールアカデミーの状況を教えてください。

【ムザヒル校長】政府が3月に休校を決めてから、子ども達への教育活動を一切禁止しているので、現在、アル・カイールアカデミーは全校休校しています。はじめの頃は先生へのトレーニングだけでも継続しようかと思いましたが、そのような活動も禁止されている状況です。

【カユーム氏】私は総務も兼任しているので学校へ仕事に行っています。他にも会計担当者や一部の職員は仕事をしています。本校内の縫製工房はメンバー全員が今でも通っていて、日本からのオーダー「kar-khana(カルハナ)」の仕事をしています。

【質問】新型コロナウイルスにより、子どもたちの暮らしはどんな影響受けていますか?

【ムザヒル校長】私たちの生徒がウイルスに直接感染したという情報はありません。しかし子どもたちは学校に通わず、スラム地域の家の外の危うい環境で時間を費やしているので、彼らは間接的に影響を受けます。教育と教師のポジティブな影響がなければ、これらの生徒はマフィアに引き込まれる可能性が非常に高くなります。長期化すれば、学校が再開するときに生徒の退学が考えられます。

【質問】アル・カイールアカデミー周辺の状況や、学校の現在の活動について教えてください。

【ムザヒル校長】生徒の親たちの多くは日雇い労働者として建築現場で働いたり、物売りをしています。彼らは外出禁止令によって失業しています。また私たちは休校し、学校の運営費となる寄付金が減少したため、教師の3月と4月分の給与を30%削減する必要がありました。このような状況で、学校としては生徒や教師、スタッフの家族、また学校とは直接繋がりが無くても困窮している家族に対して主要な食糧の支援を行なっています。これまで合計で約2千500世帯に配布しました。30日分の食糧を配布したかったのですが、なるべく多くの人へ届けるために10日分のみ配布することにしました。今後も更に2千500世帯に配布する予定です。私たちはこの食糧支援のために、寄付の呼びかけを行なっています。

【カユーム氏】本校では、先生やスタッフ( 20~30名)が、食糧の準備や配布作業にあたっています。ま

た、各分校長は担当する分校の周辺住民の生活状況の調査をしています。教師の中でも第3分校で高学年に数学を教えているナヴィードさん、教務主任のヤスミンさんは別のスラム地域の支援のための調査もしています。もし、その地域で支援が必要であることが判明した場合は、ムザヒル校長や私が現地を訪問して確認の上、支援を行なっています。

【質問】様々なNGOも食糧支援を行なっているそうですが、どのような状況ですか?

【ムザヒル校長】過去1か月間、NGOは困っている人々に食糧支援をとても積極的に行なってきました。しかし最近では、地元の個人や企業の寄付が減り、ほとんどの団体が資金難で、これまでと同じ量の配布を継続することができなくなってきています。私たちは私たちの役割が今後重要であると思っています。一方でパキスタン政府は、困窮している家族に1ヶ月3千ルピーを提供し始めました。

【写真 本校で食糧支援用の豆を1世帯分づつ袋に詰めている 1世帯(6~7人)の食糧セット:小麦10㎏、米5㎏、砂糖2㎏、豆類2kg、油5リットル、茶葉500g】

 

【質問】今は食糧支援をしていますが、長期的にはアル・カイールアカデミーとしてどのような活動を考えていますか?

【ムザヒル校長】パキスタンの失業率は先進国よりも非常に高いため、食料支援は今度4.6ヶ月間ほど必要だと考えています。 現在、学校の教師やスタッフが生徒の家を訪問して状況を聞き取り、教師からの意見や提案も受けています。しかし、生徒との定期的なつながりは持てておらず、彼らの学習プログラムも計画できない状態です。 ラマダーン(断食月)明けのイード(祝祭日、今年は5月25日頃)の後、適切な感染予防策を講じて教師のトレーニングを再開する予定です。特に本校と第6分校の教師の多くは生徒と同じ地域に住んでおり、隣人同士です。教師には4.5人の生徒を各自の家へ招いて、教育活動やコロナウイルスについての正しい理解の場作りができないか相談したいと考えています。他の分校では、教師がその周辺に行くことは容易ではないので、次の段階で何らかの計画をたてるつもりです。

【カユーム氏】このような状況が長期化することで、子どもたちとの関係が途切れることを心配しています。暮らしや習慣が変わる中でも、子ども達が学校に親しみを持ち続けられるようにしたいと思っています。

 

【質問】スラム地域の人々とミドルクラスなどの人々はそれぞれどのような影響を受けていますか?

【ムザヒル校長】国民は大なり小なり、影響を受けています。多くのミドルクラスの人々は家計の支出を減らし、食費に充てています。一方、スラム地域の人々は自分の子どもたちに食べさせることさえ苦労しています。

【カユーム氏】お金持ちの人であれば、新型コロナウイルスの情報を得て、握手を控えたりマスクをすることもできます。一方、スラム地域の住民にとっていちばんの心配は外出禁止令によって仕事がなくなっていることです。彼らの住居には水道など衛生上必要な設備は無く、感染対策を積極的に考えること自体が困難です。

 例年であれば、今はラマダーン明けのイードのお祝いに向けて民族服や食べ物の店が賑わいます。しかし今年は食料品店以外の営業が禁止されています。住民の関心も、食糧の確保が第一で、服を新調することには向いていないようです。

【質問】カユームさんに質問です。あなたの故郷のバラコート(北方地域)周辺はどのような状況ですか?

【カユーム氏】私の出身の村では、村人が周辺の街に買い物へ行くことを控えるなどしており、感染者はまだいないようです。

 カラチには私たちの村や周辺の街からも出稼ぎ者が大勢います。例年であればイードを故郷で迎えるために大勢がこの時期に里帰りします。バラコートまでの約1千700 km を3千ルピー程の長距離バスで帰省するのですが、今はバスの運行が禁止されていて困っています。私の従兄弟は先日6千ルピーを払い貨物のコンテナ内に20~30名のすし詰状態で帰省しました。とても危険な行為です。

【質問】最後にJFSAの会員、支援メンバーの皆さんへメッセージをお願いします。

【ムザヒル校長】この危機的状況は、私たちの連帯と信念の試練です。この危機の間に多くの寄付者が約束していた寄付を取り消しました。しかし、JFSAの皆さんが私たちと同じように活動しているのを知り、とても嬉しく思います。皆さんの私たちへの関心と、道徳的なサポートに心から感謝しています。今はお互いに分かち合う時であり、協力してこのグローバルなパンデミックを乗り越えましょう。

【カユーム氏】私たちアル・カイールアカデミーとJFSAは、一つの目的のために仕事をしています。それは子ども達のためです。先進国を含め、今は新型コロナウイルスという共通した問題に直面しています。だからこそ、ここから前に進むために、全ての人が心を一つにする必要があると思います。まずはどこの国であろうと、影響を受けている相手のことを考え、支援する必要があります。JFSAの皆さんはこれまでも私たちの活動を古着販売事業を通して支援してくださり感謝しています。私は皆さんを家族のように感じていますので、あなた方がウイルスの被害を受けていることを心配しています。私たちも努力します。これからもお互い相談し合いながら進みましょう。

 

【会報52号より(2020.5)】