パキスタン洪水被災復興支援のご報告(2024年2月)
いつもご理解とご協力ありがとうございます。
昨年6月から8月まで取り組んだカンパ活動では、602人の個人の方と17団体の方にご協力いただき2024年1月31日時点でのカンパ金総額は1,142万6,680円になりました。
ご支援、ご協力に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
カンパ活動呼びかけのご案内はこちら

2022年11月 洪水から3か月後の被災地


これまでの経過
●2022年8月にパキスタンで起きた大洪水では国土の3分の一が水没し、家屋や耕作地、家畜を失った農村の人々が支援を求めていました。アル・カイールアカデミーは、洪水発生の直後から被災地に行って緊急支援活動に取り組みました。そして、支援の全く届いていなかったシンド州ダドゥ地区ブンド村の人々に出会い、村人たちが村にとどまって生活するために家屋の再建を必要としていることを知りました。2010年の大洪水の時に支援したシター村でも家屋を再建しました。その時に作った建物が今回の洪水でも壊れなかったことを確認し、ブンド村でも同様にしっかりした建物を作ることにしました。
●JFSAでは再建資金に充てるために、2010年の洪水被災支援カンパの残金300万円余りをアル・カイールアカデミーに送りました(下表に使途を記載)2023年5月までにはJFSAからの支援金で20軒、アメリカの団体からの支援で10軒、合計30軒の家が建ち、もっとも厳しい状況にある世帯が入居しました。
●アル・カイールアカデミーはブンド村の支援を続け、村人の暮らしの再建に家屋が必要なこと、さらに95軒の家屋が必要なことからJFSAにも協力を求めました。JFSAでは理事会で話し合い、2023年6月から8月までカンパ活動に取り組むことを決めました。2023年8月にはJFSA事務局がブンド村を訪問して、現状について村人から厳しい暮らしの状況を聞きました。
●ブンド村では、アル・カイールアカデミーがアメリカの団体の協力などを得てその後も家屋再建がすすみ、2024年1月の時点では、支援の入っていない隣接した村も含めてあと48軒の再建が必要とのことです。また、大半の村人は洪水の以前から耕作に必要な種や肥料を買う現金がなく、40%近い高利で借金をして収穫後に返済してきました。そのため、家屋再建の後の長期的な支援計画として、無利子のローン提供や学校の建設と運営、ソーラーパネルの設置などの案が出されています。アル・カイールアカデミーと確認しながらすすめていきます。


村人たちから話を聞くアル・カイールアカデミーのスタッフ家が崩れて残ったレンガ


被災地域の現状と今後の支援の方針
アル・カイールアカデミーはブンド村や周辺の被災地を毎月1〜2回、継続的に訪問していて、村人との長期的な関わりは両者の信頼関係の基盤となっています(被災地で住宅再建の支援を行なう他のNGOは、家を建てたら引き上げてしまう事が多いそうです)
2024年1月までの訪問・調査を経て、JFSAに以下の現状の報告と今後の支援方針の提案がありました。
<ブンド村の現状>
・村では他のNGOなどの支援を受けその後も20軒の家が建てられ、これまで合計50軒の家が再建されています。政府による支援に向けた動きも一部あるそうですが、支援と引き換えに賄賂を要求されたケースも村人から報告されています。
・暮らしの基盤が別の地域にもある村人が一部いる事が分かりました(近隣の町などで親戚と暮らしていたり仕事をしたりしている)そこで、この村で暮らし続ける以外に方法のない人に絞った結果、あと10軒の家を再建する必要があると考えています。
・村の地下水は塩分が多く飲料用としては使えません。飲料用水は1km程離れた村から細いパイプを引いて使用していますが、設備は老朽化しています。また貯水タンクが無いため、安定して水を利用することが出来ない状態です。
<周辺の村の現状>
・ブンド村と隣接する(1〜2kmの範囲)4つの村の調査を行なったところ、村人は今でも被災当初にNGOから支給されたテントに暮らしており、他のNGOなどからも支援が届いていないことが確認されました。

テント暮らしの家族を訪問するPJC代表のカユーム氏(左)

テント生活を続ける家族


<今後の支援の方針>
アル・カイールアカデミーは、被災地支援のために寄せていただいたカンパ金を村人の支援に最大限活かすため、被災者の中で最も困窮し、他に頼ることの出来ない人々への支援を優先する必要があると考えています。そのために村人たちと話し合いを重ねながら、今後の支援を以下のようにすすめます。

・ブンド村でさらに10軒の家を再建する。
・周辺の村で38軒の家を再建する。
・ブンド村の安定した飲料用水を確保するために、新たに地下水を汲み上げる工事を行ない、伴ってポンプやパイプ、ダンクなどを新設する。
・長期的な被災者の生活支援として、無利子のローン提供などを検討する(耕作に必要な種子や肥料代など)。

緊急支援の当初ではわかりませんでしたが、訪問を重ねる中で信頼関係ができたことによって、徐々にコミュニティの様子が見えるようになっています。
2005年のパキスタン北部大地震、2010年の大洪水の時もアル・カイールアカデミーは、被災した人々と話し合いを重ね、JFSAと確認しながら必要な支援の方策を決めてきました。今後もその経験を活かし支援をすすめていきます。